コラム
COLUMN
犬や猫の尿トラブル、泌尿器疾患とは?症状、原因、治療法を徹底解説
2024.12.20犬・猫
犬や猫にも人間と同じように腎臓、尿管、膀胱、尿道といった泌尿器がありますが、これらに異常が発生すると泌尿器系の疾患を引き起こします。また、体内の不要な物質を排出する役割を担っているため、泌尿器の病気は放置すると深刻化することがあります。そのため、愛犬や愛猫の尿の様子に異変を感じた場合は、すぐに獣医師に相談することが大切です。
今回は犬や猫の泌尿器疾患について、症状や治療方法、予防法などを解説します。
■目次
1.よく見られる症状
2.診断方法
3.代表的な泌尿器疾患とその治療法
4.予防法やご家庭での注意点
5.まとめ
よく見られる症状
泌尿器疾患でよく見られる症状は、以下が挙げられます。
・多飲多尿
・血尿(オレンジやピンク、赤の尿)
・頻尿
・尿が少ない、排尿の姿勢を取っても出ない
・尿がキラキラと光って見える(結晶が混ざっている)、砂のようなものが混ざっている
・食欲低下、元気消失、嘔吐
犬や猫にこれらの症状が見られたら、早めに動物病院を受診しましょう。特に、飲水量が減りやすい冬は泌尿器疾患が増える傾向があるため、注意が必要です。
診断方法
問診や身体検査で泌尿器疾患が疑われた場合、以下のような検査を組み合わせて診断を行います。
<尿検査>
尿結晶や尿結石、細菌、血液などが混ざっていないかを確認します。また、尿の比重やpHといった性質を調べることで、病気の原因を特定する手がかりとなります。
<血液検査>
腎臓の機能や炎症の指標を確認します。場合によっては、外部の検査機関に依頼することもあります。
<レントゲン検査>
尿結石が疑われる場合、レントゲン検査で石の有無や数、位置を確認します。ただし、レントゲンでは写らない尿結石もあるため、その場合は超音波検査で確認します。さらに、造影検査を用いて尿の流れが詰まっていないかを調べることもあります。また、前立腺の大きさも同時に確認することが可能です。
<超音波検査>
尿結石や尿結晶の有無、数、位置を確認します。また、腎臓や膀胱など尿路全体の状態(炎症や尿のうっ滞がないかなど)も確認でき、前立腺の状態も合わせて評価することが可能です。
<その他>
必要に応じて、カテーテルや針によるサンプル採取、外注の病理検査などを実施することがあります。
代表的な泌尿器疾患とその治療法
泌尿器疾患にはさまざまな種類がありますが、特に多く見られるものは以下の通りです。
・慢性腎臓病
・急性腎障害
・尿石症、尿結晶、尿道閉塞
・膀胱炎
・前立腺肥大、前立腺腫瘍(特に犬が多い)
各病気の特徴とその治療内容は以下のようになります。
<慢性腎臓病>
腎臓の機能が低下すると、老廃物が尿としてうまく排出されなくなり、腎不全や尿毒症を引き起こす可能性があります。進行すると、最終的には命に関わる危険な状態に陥ることもあります。また、一度損傷した腎臓の組織は元に戻らないため、病気を早期発見することが重要です。
治療を行う際には、適切なステージに応じた食事療法や投薬を行います。病気が進行して脱水が見られた場合には、点滴治療を併用します。また、慢性腎臓病は基本的に完治が難しいため、生涯にわたる継続的な治療が必要となります。
<急性腎障害>
何らかの原因で腎臓の機能が数時間から数日以内に急激に低下する病気です。腎臓の機能が低下すると、老廃物を尿として体外に排出することができず、これらの有害物質が体内に蓄積してしまいます。これにより、全身にさまざまな悪影響が出るため、早期の治療が重要です。
治療では、原因に応じた治療を行い、同時に輸液療法などでサポートします。場合によっては透析が必要になることもあります。また、回復しても、慢性腎臓病に進行する可能性があるため、継続的な治療が求められます。
<尿結晶>
<尿中のミネラルや塩分が結晶化してできる固形物のことです。将来的に尿結石へと進行する可能性があります。これが尿路に溜まることで、さまざまな健康問題を引き起こすことがあります。
治療を行う際には、フードやおやつの変更、飲水量の増加、薬を服用して、尿結晶が出なくなるように対策を講じます。
<尿石症>
尿中のミネラル成分が結晶化し、腎臓や尿管、膀胱、尿道に結石が発生する病気です。
オスの場合、陰茎部分では尿道が細くなっているため、小さな結石でも簡単に詰まってしまうことがあります。このような状態になると、尿が排出できなくなるため、早急な治療が必要です。尿が排出できなくなると、膀胱が過度に膨らみ、破裂する危険性があるほか、急性腎不全を引き起こすこともあり、最悪の場合、命に関わる深刻な事態に発展することがあります。
尿結石が尿道を塞いでしまう尿道閉塞の場合は、緊急の処置が必要です。結石がある場所によって治療が異なりますが、手術が必要となるケースもあります。
<膀胱炎>
膀胱の内壁が炎症を起こす状態で、主に細菌感染が原因となりますが、ほかにも結石や腫瘍、尿道の異常などが要因となることもあります。膀胱炎は、軽度であっても放置すると慢性化する可能性があるため、注意が必要です。
治療では痛み止めや止血剤、感染がある場合には抗菌剤などを組み合わせて治療を行います。
<前立腺肥大、前立腺腫瘍(犬)>
犬の前立腺肥大は特に高齢の未去勢のオス犬に多く見られる病気で、前立腺が大きくなり、頻尿や血尿などさまざまな症状を引き起こします。一般的にホルモンの影響が主な原因となりますが、加齢によって発生しやすくなります。命に関わる病気ではありませんが、進行すると生活の質が低下しやすいため、早めに診断・治療を行うことが重要です。
犬の前立腺腫瘍は発生自体は稀ですが、その多くは悪性で、進行が早いことが特徴です。主に高齢のオス犬に見られますが、去勢の有無に関わらず発症することがあります。この病気は、特に移行上皮癌や前立腺癌が見られ、周囲の組織や臓器に転移することが多く、早期発見が難しい病気です。
前立腺が肥大している場合は去勢手術を行い、腫瘍が見つかった場合は手術で摘出し、その後、抗がん剤や痛み止めなどを組み合わせて治療を行います。
予防法やご家庭での注意点
前述したとおり、冬の寒い季節になると、飲水量が自然と減少する傾向があります。これに伴い泌尿器疾患が増えるリスクが高まります。そのため、ご家庭では水飲み場を複数の場所に設置したり、ウェットフードを取り入れて食事中の水分を増やしたりすることで、水分摂取量を増やす工夫をしましょう。
また、日頃から尿の状態をチェックすることも大切です。ペットシーツを交換する際には、尿の色や量、尿中に異常な物質が混ざっていないかを確認する習慣をつけましょう。特に、尿にキラキラとした砂のような結晶が混ざっている場合、尿結石や尿路疾患の初期症状の可能性があります。通常の尿は透明感のある黄色や淡い色ですが、赤みがかっていたり、濁っていたりする場合は、早めに動物病院での診察を受けることをお勧めします。
まとめ
犬や猫では、泌尿器疾患はよく見られる病気です。そのため、普段から愛犬や愛猫の様子を観察し定期的な検診を通じて、早期発見・早期治療を目指しましょう。尿疾患に関して不明点や気になることがございましたら、当院までご相談ください。
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この記事を書いた人
- 永原動物病院 院長
- 永原 未悠(ながはら みゆ)
飼い主様へのインフォームドコンセントや、信頼関係を大切にしています。大事な予防も含め、疾患(病気)への治療や方針について話し合い、飼い主様と一緒に進めてまいりたいと思います。
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