愛犬や愛猫の尿路結石を防ぐ|獣医師が教える早期発見と予防のコツ

2025.03.21犬・猫

愛犬や愛猫の排尿行動に、「尿の量が少ない」や「トイレに頻繁に行くけれど、ほとんど排尿していない」といった変化が見られると心配になりますよね。こうした症状の裏に潜んでいる可能性があるのが「尿路結石」です。尿路結石は犬や猫に多く見られる病気で、放置すると命に関わることもあるため、早期発見と予防が重要です。

今回は犬や猫の尿路結石について、症状や原因、治療方法、日常生活でできる予防策などを詳しく解説します。

■目次
1.尿路結石とは?
2.症状と早期発見について
3.原因
4.診断方法
5.治療方法
6.予防法やご家庭での注意点
7.まとめ

尿路結石とは?

尿路結石とは尿中に含まれるミネラル成分が結晶化し、腎臓、尿管、膀胱、尿道などの尿路に石のような物質が形成される病気です。この結石が排尿を妨げたり、炎症を引き起こしたりすることで、さまざまな症状が現れます。

犬では主に膀胱で結石が形成されるケースが多く、細菌感染が原因となることがあります。一方、猫では特発性膀胱炎が原因で尿道結石や尿道栓子(結晶が尿道に詰まる状態)が形成されることが多く、特にオス猫は尿道が細いため閉塞のリスクが高まります。

症状と早期発見について

尿路結石は、症状が進行するまで気づきにくい場合があります。しかし、以下のような症状や行動変化が見られた場合は注意が必要です。

<典型的な症状>

・頻尿(トイレに何度も行く)
・血尿(赤やピンク色の尿)
・排尿時の痛み(排尿中に声を上げることも)
・尿の色の変化や混濁
・不適切な場所での排尿

<注意すべき行動の変化>

・トイレの回数が増える
・排尿姿勢を取るものの、尿が出ない
・尿にキラキラした結晶が混ざって見える

<緊急性の判断基準>

以下の症状が見られる場合は、命に関わる可能性があるため、すぐに動物病院を受診してください。

・完全に尿が出なくなる(尿道閉塞)
・食欲不振や嘔吐が見られる
・お腹を触ると痛がる

また、尿路結石は無症状のケースも少なくありません。そのため、年に1~2回の定期健診で尿検査を受けることが早期発見につながります。

原因

尿路結石は尿中に含まれるミネラル成分が濃縮され、溶けきらずに結晶化することで形成されます。この結晶が徐々に大きくなり、結石となります。結石の形成には尿のpHや水分摂取量、食事内容など、さまざまな原因が関係しています。

結石にはいくつかの種類がありますが、特に以下の2つが多く見られます。

<ストルバイト結石>

尿がアルカリ性の場合に形成されやすく、細菌感染が原因になることが多いです。

<シュウ酸カルシウム結石>

尿が酸性の場合に形成されやすく、溶解が難しいため手術が必要になるケースもあります。

また、尿路結石のリスクを高める要因としては高齢の犬や猫は結石が発生しやすく、さらにダックスフンドやブルドッグなどの特定の犬種やペルシャ猫やシャム猫といった猫種も発症リスクが高い傾向にあります。

さらに、食事内容も結石の形成に大きく影響します。食事に含まれるミネラル成分の過剰摂取や、栄養バランスの偏った食事は結石のリスクを高める原因となります。特に低品質のフードやおやつを与え続けることには注意が必要です。

診断方法

尿路結石の診断は、以下のような検査を組み合わせて行います。

<尿検査>

尿のpHや結晶の有無、尿比重などを確認します。

<血液検査>

腎機能や全身状態を評価します。

<画像診断>

レントゲンや超音波検査(エコー)で結石の大きさや位置を確認します。

一つの検査だけでは原因が特定できないこともあるため、これらの複数の検査を組み合わせて総合的に診断を進めていきます。

治療方法

治療は結石の種類や大きさ、症状の程度に応じて選択されます。

<食事療法>

ストルバイト結石の多くは、療法食によって尿のpHを調整することで溶解が可能です。食事療法は低侵襲で効果的な方法ですが、定期的な尿検査で経過を確認することが重要です。

<外科手術>

シュウ酸カルシウム結石や大きな結石で食事療法が効果を示さない場合は、外科的に結石を摘出します。

<薬物療法>

膀胱炎を併発している場合は、抗生物質や消炎剤を投与して炎症を抑えます。

治療は一つの方法に限定されることなく、これらの複数の手段を組み合わせて行うことが多いです。

予防法やご家庭での注意点

尿路結石は、日々の生活習慣を見直すことで予防が可能です。

<適切な水分摂取>

十分な水分摂取は、尿を薄めて結石の形成を防ぐ効果があります。特に猫は水をあまり飲まない傾向があるため、ウェットフードを取り入れるなどの工夫が必要です。犬の場合も、新鮮な水をいつでも飲める環境を整えましょう。

<推奨される食事管理>

ミネラルバランスが調整されたフードを与えることが大切です。また、獣医師が推奨する療法食を活用し、必要に応じて適切な栄養管理を行いましょう。

<運動の重要性>

適度な運動は代謝を促進し、尿路の健康維持に役立ちます。特に室内飼いの猫は運動不足になりやすいため、遊びの時間を増やすことも予防につながります。

<定期健診の必要性>

年に1〜2回の定期健診で尿検査を行い、早期発見と早期治療を心がけましょう。

まとめ

尿路結石は適切な予防と早期発見で、愛犬や愛猫の健康を守ることができます。日頃から排尿状況を観察し、異変に気づいた際には速やかに獣医師に相談してください。

さらに、食事管理や水分摂取、定期健診を徹底することで尿路結石を予防し、愛犬や愛猫が元気に生活を送れる環境を整えることができます。

岡山県岡山市を中心に地域のホームドクターとして診療を行う
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この記事を書いた人
永原 未悠(ながはら みゆ)
  • 永原動物病院 院長
  • 永原 未悠(ながはら みゆ)

飼い主様へのインフォームドコンセントや、信頼関係を大切にしています。大事な予防も含め、疾患(病気)への治療や方針について話し合い、飼い主様と一緒に進めてまいりたいと思います。

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