コラム
COLUMN
犬と猫の腎臓病について|原因や予防法を徹底解説
2024.11.05犬・猫
犬や猫は年を取ると、さまざまな病気にかかりやすくなります。その中でも特に気をつけたいのが「腎臓病」です。腎臓病の一つである「慢性腎臓病」は、長時間にわたり腎臓の働きが徐々に弱まっていく病気で、高齢の犬や猫によく見られます。ただし、若い子でも発症することがあるため注意が必要です。
また、慢性腎臓病は完治が難しいため、病気の進行を遅らせることが治療の目的となり、早期発見が重要となります。
今回は犬と猫の腎臓病について、症状や原因、治療方法などをご紹介します。
■目次
1.腎臓病とは
2.症状
3.原因
4.腎臓病の診断方法
5.腎臓病の治療と管理
6.予防と定期健診:飼い主様ができること
7.まとめ
腎臓病とは
腎機能の病気として、急性腎障害と慢性腎臓病の2つが挙げられます。
急性腎障害は、腎臓の機能が数時間から数日で急激に低下するのが特徴です。それに対して、慢性腎臓病は月単位から年単位でゆっくりと進行していく病気です。
どちらの病気も腎臓の機能が低下することで、体内に老廃物が蓄積され、尿毒症を引き起こす可能性があります。病状が進行すると、体全体に悪影響を及ぼし、最悪の場合、命に関わることがあります。そのため、早期の発見と適切な治療が非常に重要です。
症状
腎臓病は、病気によって症状が異なります。
急性腎障害では突然体調が悪化し、以下のような症状が見られることがあります。
<急性腎障害の症状>
・元気消失
・食欲低下
・嘔吐
・下痢
犬や猫の嘔吐の原因とその予防についてはこちらから
犬や猫の下痢の症状と原因、治療についてはこちらから
一方で、慢性腎臓病はゆっくりと進行し、以下のステージが進むにつれて症状が徐々に悪化します。特に高齢の犬や猫が普段よりもたくさん水を飲む様子が見られたら、動物病院で検査を受けることをお勧めします。
<慢性腎臓病の症状>
・ステージ1:症状はほとんど見られません。
・ステージ2:軽度の多飲多尿が見られることがあります。
・ステージ3:食欲不振、嘔吐、下痢、脱水、貧血、体重減少などの症状が現れます。
・ステージ4:ステージ3の症状に加え、元気の低下、意識レベルの低下、激しい嘔吐などが見られます。
原因
腎臓病を引き起こす原因は多岐にわたり、代表的な病気としては以下が挙げられます。
【急性腎障害】
<腎前性(腎臓への血流が低下することで起こる腎臓の機能障害)>
・脱水
・心不全
<腎性(腎臓そのものに直接的な障害が起こる状態)>
・中毒(ぶどう、エチレングリコール、薬など)
・感染症(レプトスピラ症、腎盂腎炎など)
・薬の副作用(抗菌薬、NSAIDs(痛み止めなど)
<腎後性(尿路の閉塞が原因で腎臓の機能に障害が起こる状態)>
・尿路結石
【慢性腎臓病】
・加齢:腎臓の機能は年齢とともに低下します。
・遺伝的要因:一部の犬種や猫種には、慢性腎臓病になりやすい遺伝的傾向があります。
・感染症:細菌感染やウイルス感染が腎臓にダメージを与えることがあります。
・尿路結石:尿路結石が腎臓に影響を与えることがあります。
・食事要因:リンやタンパク質が多い食事により、腎臓に負担がかかることがあります。
・薬の副作用:腎臓に負担がかかるお薬を投与することによって慢性腎臓病を起こすことがあります。
腎臓病の診断方法
<血液検査>
尿素窒素(BUN)とクレアチニン(筋肉を動かすためのエネルギーを使ったときに作られる老廃物)の値を測定します。これらの数値が高いと腎機能の低下の指標となります。そのため、BUNとクレアチニンが上昇する前に、SDMAの値を調べることで、早期に診断が可能です。
<尿検査>
尿比重を測定し、腎臓が尿を濃縮する能力を評価します。また、尿蛋白クレアチニン比(UPC)を測定し、尿中のタンパク質の量を確認します。この値が高い場合、腎臓に何らかのダメージがある可能性が考えられます。
<超音波検査>
超音波で腎臓や膀胱など尿路全体を見ることができます。この検査により、形や大きさ、血流の異常、腫瘍や結石の有無などを確認します。
腎臓病の治療と管理
急性腎障害の治療は投薬や輸液、場合によっては入院が必要となります。一方で、慢性腎臓病の治療では、その進行状態やステージに応じて、複数の治療方法を組み合わせて行います。治療が長期にわたることが多いため、動物病院での治療だけでなく、ご家庭での日々の管理も重要です。
<食事療法>
タンパク質、リン、ナトリウムを制限した特別な食事に切り替えることで、腎臓への負担を軽減することができます。これにより、腎臓の機能が保たれやすくなり、病気の進行を遅らせ、生存期間の延長が期待できます。
<薬物療法>
高血圧は腎臓病を悪化させる原因の一つであるため、血圧を下げる薬が処方されることがあります。また、さまざまな腎臓の機能をサポートする薬もあるため、犬や猫の状態や病気の進行具合に応じて、最適な薬が処方されます。
<輸液療法>
腎臓が尿を十分に濃縮できなくなると、体内の水分が大量に排出されてしまい、結果的に脱水症状を起こすことがあります。脱水を改善するために、輸液や点滴による補液が行われます。これにより、体内の水分バランスを整え、腎臓への負担を軽減することができます。
予防と定期健診:飼い主様ができること
愛犬や愛猫の健康を守るためには、健康診断と日常生活における予防が重要です。
<適切な食事の選択>
おやつは与え過ぎに注意し、栄養バランスの取れた総合栄養食を中心に与えましょう。人間の食べ物には塩分などが多く含まれており、腎臓に大きな負担をかけることがあるため、与えないようにしましょう。また、人間用の薬や犬や猫が食べてはいけない食品を誤って口にしないよう、しっかりと管理を行うことが重要です。
犬や猫の誤飲誤食とその予防についてはこちらから
犬や猫にとって中毒症状が出る食べ物と、食べてしまったときの対処法についてはこちらから
<水分摂取の管理>
常に新鮮な水を飲める環境を整えておくことが大切です。特に冬は水分摂取量が減る傾向があるため、ウェットフードやスープ状の食事を取り入れることで、水分補給をサポートする工夫をしましょう。これにより、脱水のリスクを減らし、腎臓への負担を軽減することができます。
<ストレス軽減>
適度な散歩や運動を日常に取り入れることで、犬や猫の体調を整え、ストレスを溜めないようにすることが大切です。
<定期健康診断>
特に慢性腎臓病では前述したとおり、症状が現れたときにはすでに病気がかなり進行していることが多いです。そのため、定期的に健康診断を行い、病気を早期発見することが重要です。
まとめ
腎臓病には「急性腎障害」と「慢性腎臓病」の2種類がありますが、いずれも発症すると完治が難しい病気です。そのため、愛犬や愛猫に少しでも異変を感じたら、早めに動物病院を受診することが大切です。
また、早期発見と適切な治療が、腎臓病の進行を抑える鍵となるため、日頃から愛犬や愛猫の健康状態をよく観察することを心がけましょう。
岡山県岡山市を中心に地域のホームドクターとして診療を行う
永原動物病院
当院の診療案内はこちらから
初めての方はこちらから
お電話でのお問い合わせはこちら:086-262-1837
この記事を書いた人
- 永原動物病院 院長
- 永原 未悠(ながはら みゆ)
飼い主様へのインフォームドコンセントや、信頼関係を大切にしています。大事な予防も含め、疾患(病気)への治療や方針について話し合い、飼い主様と一緒に進めてまいりたいと思います。
- 土曜のみ9:00~13:00の診療
- 水曜と土曜の午後・日曜・祝日・GW・お盆・年始年末
- 各種お支払い可能
- 現金/Paypay/各種クレジット