コラム
COLUMN
高齢猫に多い甲状腺機能亢進症|早期発見のポイントと治療選択
2025.01.22猫
ご家庭に高齢の猫がいる飼い主様の中には、「最近、猫がよく食べるのに痩せてきた気がする」と感じたことがある方も多いのではないでしょうか。
このような症状の背後に隠れているのが、「甲状腺機能亢進症」という内分泌疾患です。この病気は、主に10歳以上の高齢猫に見られますが、早期に発見して適切な治療を行うことで、猫の生活の質(QOL)を大きく改善できる可能性があります。
今回は猫の甲状腺機能亢進症について、原因や症状、治療方法、日常生活での管理方法などを詳しく解説します。
■目次
1.甲状腺機能亢進症とは
2.症状と早期発見
3.診断方法
4.治療方法
5.合併症と注意点
6.日常生活での管理
7.予後と経過
8.まとめ
甲状腺機能亢進症とは
甲状腺機能亢進症は、甲状腺のホルモンが過剰に分泌される病気です。甲状腺は喉に位置する小さな臓器で、体の代謝を調整する重要な役割を持っています。このホルモンは、細胞の新陳代謝を活発にし、脂肪やエネルギーの産生を助ける働きをしますが、過剰になると代謝が異常に高まり、体にさまざまな影響を及ぼします。
猫の甲状腺機能亢進症は、主に甲状腺の良性腫瘍や過形成が原因で発症します。特に10歳以上の猫で発症率が高く、品種や性別に関係なく見られる疾患です。
症状と早期発見
甲状腺機能亢進症はいくつかの特徴的な症状が見られます。代表的なものとして、以下が挙げられます。
・食欲旺盛なのに体重が減る
・多飲多尿
・落ち着きがなくなる、過活動になる
・毛並みが悪くなる
・頻脈や心拍数の増加
また、一部の猫では攻撃的な行動を示したり、大きな声で鳴いたりするなどの行動変化が見られることもあります。しかし、これらの症状は加齢による変化や他の病気と誤解されやすいため、注意が必要です。そのため、定期的な健康診断を受けることで、これらの症状が現れる前に病気を発見できる可能性が高まります。
診断方法
甲状腺機能亢進症の診断には、主に以下の方法が用いられます。
<触診>
獣医師が猫の首の部分を触診し、甲状腺の肥大を確認します。
<血液検査>
最も重要な診断方法です。血中の甲状腺ホルモン(T4)濃度を測定します。
<追加検査>
・一般血液検査:肝酵素の上昇が多くの症例で認められます。
・尿検査:腎機能の状態を評価します。
・血圧測定:高血圧の有無を確認します。
・X線検査やエコー検査:心筋症など他の臓器に関連する合併症の診断に役立ちます。
診断の際には、他の病気との鑑別も重要です。軽度の甲状腺機能亢進症の場合、一度の検査で正常値を示すこともあるため、複数回の検査が必要になることがあります。
治療方法
猫の甲状腺機能亢進症の主な治療方法は以下の通りです。
<抗甲状腺薬(メルカゾール)による内服治療>
最も一般的な治療法です。治療開始後3か月間は頻繁に血液検査を行い、薬の投与量を調整します。
<食事療法>
ヨウ素を制限した専用の療法食を使用します。多くの場合は薬物療法の補助的な治療として用いられます。
<外科的治療(甲状腺切除手術)>
根本的な治療法で、異常な甲状腺を外科的に取り除きます。
これらの治療方法の選択は猫の年齢や健康状態、飼い主様のライフスタイルを考慮して、最適な方法が選択されます。
合併症と注意点
甲状腺機能亢進症は、以下の合併症を引き起こす可能性があります。
・心臓疾患(肥大型心筋症など)
・腎臓疾患
・高血圧
治療を始めることでこれらのリスクを軽減できますが、治療後も定期的な検査と観察が必要です。特に治療後に腎臓病などの隠れていた疾患が表面化するケースがあるため、注意深いモニタリングが重要です。
日常生活での管理
甲状腺機能亢進症が見られる猫の日常生活を管理するために、以下の点に注意しましょう。
・処方された薬を適切に投与する
・療法食を与えるなど、適切な食事管理を徹底する
・猫にとってストレスの少ない環境を作る
・定期的に体重を測定して変化を記録する
・獣医師の指示に従い、定期検査を実施する
飼い主様の適切な管理と獣医師との連携が、愛猫の健康を守る鍵となります。
予後と経過
適切な治療を受けることにより、多くの猫で症状が改善され、生活の質が向上します。しかし、甲状腺機能亢進症は完治が難しく長期的な管理が必要な慢性疾患です。そのため、治療を継続することで再発リスクを最小限に抑え、猫の健康を維持することが可能です。
まとめ
甲状腺機能亢進症は、高齢猫によく見られる病気ですが、早期発見と適切な治療を行うことで、良好な予後が期待できる疾患です。特に、飼い主様が普段から猫の体調や行動の変化に気を配り、異常を感じたら速やかに獣医師に相談することが重要です。
ほかにも、治療後も継続的な管理を行い、定期的な健康診断を受けることで、愛猫と幸せな時間を長く共有することができます。飼い主様と獣医師の協力によって、愛猫が健康で快適な生活を送れるようにサポートしていきましょう。
岡山県岡山市を中心に地域のホームドクターとして診療を行う
永原動物病院
当院の診療案内はこちらから
初めての方はこちらから
お電話でのお問い合わせはこちら:086-262-1837
この記事を書いた人
- 永原動物病院 院長
- 永原 未悠(ながはら みゆ)
飼い主様へのインフォームドコンセントや、信頼関係を大切にしています。大事な予防も含め、疾患(病気)への治療や方針について話し合い、飼い主様と一緒に進めてまいりたいと思います。
- 土曜のみ9:00~13:00の診療
- 水曜と土曜の午後・日曜・祝日・GW・お盆・年始年末
- 各種お支払い可能
- 現金/Paypay/各種クレジット