コラム
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【獣医師監修】猫の尿道閉塞|症状と緊急性について完全解説
2024.12.25猫
愛猫がトイレでうずくまっていたり頻繁にトイレに通っていたりしたら、もしかしたら病気かも?と不安になりますよね。トイレの異常を引き起こす病気は多岐にわたりますが、その中でも特に注意が必要なものが「尿道閉塞」で、短時間で生命に関わる事態に陥る可能性もあるほど緊急性の高い状態です。
今回は猫の尿道閉塞について、症状や予防方法、治療法などを解説します。
■目次
1.尿道閉塞とは
2.症状と早期発見のポイント
3.主な原因
4.予防法
5.緊急性と治療について
6.まとめ
尿道閉塞とは
尿道閉塞とは、尿道が塞がれることで膀胱から尿が出なくなってしまう状態をいいます。
冬は水を飲む量が減りやすいため発生率が高まりますが、特にオス猫では尿道が細長くS字にカーブしているため、発生率が高い傾向にあります。
また、尿が全く出ない状態が続くと、本来であれば尿と一緒に体の外に排泄されるべき有害な物質が体の中に溜まってしまい、「尿毒症」を引き起こします。尿毒症は短時間で生命に関わる可能性のある緊急性の高い症状であるため、特に注意が必要です。
症状と早期発見のポイント
尿道閉塞が起こると、主にトイレの異常が見られるようになります。
<初期症状>
・トイレでうずくまる
・頻繁にトイレに行く
・尿をする時に痛そうに鳴く
・尿の量が少ない
・尿の色が赤い
また、完全に尿道が塞がってしまうと食欲の低下や嘔吐などの症状が見られるようになり、重度になると意識障害や痙攣などを引き起こし、数時間で亡くなってしまうこともあります。
主な原因
猫が尿道閉塞を起こす原因としては、以下のようなものが挙げられます。
<結石>
最も一般的な原因で、結石が尿道に詰まることで起こります。猫の尿管閉塞のうち、80〜90%程度の症例において、尿管結石が原因という報告もあります。
<粘液栓>
粘液が固まってできた栓によって尿道が塞がれてしまうこともあります。
<炎症>
尿道の炎症によって粘膜が腫れ、尿道が塞がれてしまうことがあります。また、炎症産物が塊になって尿道を塞ぐこともあります。
<ストレス>
猫はストレスを感じると尿の病気を引き起こしやすく、それらが原因で起こることがあります。
予防法
猫の尿道閉塞を予防するためには、以下のような飼い主様の日々の心がけが大切です。
<水分摂取>
水を飲む量が少なくなると、尿が濃縮されます。さらに、尿が膀胱に長くとどまってしまうため、結石が作られやすくなってしまいます。猫はもともとあまり水を飲まない動物であるため、自動給水器を導入するなどして愛猫の好みに合った飲み水を用意したり、水飲み場の数を増やしたりして、水分をたくさん摂取できるように環境を整えましょう。
<適切な食事管理>
ミネラル分の高い食べ物(煮干しや鰹節など)は結石の原因になります。そのため、基本的には猫用の総合栄養食のみを与え、おやつはなるべく控えるようにしましょう。
<ストレス軽減>
前述したとおり、ストレスはさまざまな尿の病気を引き起こすリスクがあります。そのため、静かに過ごせる環境を整える、キャットタワーなどを設置して適度に運動させる、トイレは常に清潔に保つなどしましょう。
<定期的な健康診断>
尿の病気は完全に予防することは難しく、再発しやすいという特徴もあります。そのため、早期発見のためには定期的に健康診断を受けることが大切です。
緊急性と治療について
繰り返しになりますが、尿が全くでなくなってしまうと尿毒症に陥り、放置すれば数時間で生命を脅かす可能性があります。そのため、尿の出が悪い、トイレに頻繁に通うなど、初期症状が見られた段階で病院を受診することで、愛猫の命を救うことができます。
また、尿道閉塞は緊急性が高い症状であるため、病院では尿道にカテーテルを挿入するなどして、直ちに閉塞を解除するような治療を行います。そして閉塞を解除することができたら、全身状態や症状に合ったお薬(抗菌薬や消炎剤、止血剤など)を投与したり、点滴治療を行ったりします。ただし、万が一閉塞を解除できなかった場合は、手術が必要になります。
まとめ
猫の尿道閉塞は早い段階で病院を受診し、治療を始めることが重要です。特に冬場やオス猫では発症のリスクが高いため、尿の様子や体調に変化がないか、注意深く観察するようにしましょう。万が一気になる症状が見られた場合は、どんな些細なことでも結構ですので、当院までご相談ください。
<参考>
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjvas/53/3+4/53_59/_pdf/-char/ja
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この記事を書いた人
- 永原動物病院 院長
- 永原 未悠(ながはら みゆ)
飼い主様へのインフォームドコンセントや、信頼関係を大切にしています。大事な予防も含め、疾患(病気)への治療や方針について話し合い、飼い主様と一緒に進めてまいりたいと思います。
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